住職法話 其の四

住職法話 其の四

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愛別離苦「父との別れ」

 
仏教用語で「四苦八苦」があります。人間である限り避けられない八つの苦しみ。四苦は「生・老・病・死」残りの四苦の中に「愛別離苦」があります。
愛する人や物と別れる苦しみ。父は13年前に肺癌が見つかり、片方の肺2/3を切除、5年後に脳に移転、2度の大手術、僧侶である父は、抗がん剤治療はせず自然に任せる事を選択、健康には人一倍気を付け、毎日の歩行、血圧、体温、食事等を日記をつけておりました。
私は遠方の為、頻繁に会うことができませんでしたが、SNSのお陰で耳が遠い父でも、母を通してすぐに顔を見て話すことができました。
以前に檀家さんから「奥さん、親に会うときは土産はいらん。顔を見せてあげることが一番の親孝行やで!」とその言葉を教訓に時間を作り帰省しておりました。
誰も父が肺癌だということをすっかり忘れてしまうくらいの元気さでした。亡くなる10日前に急に夜中に体調が悪くなり救急搬送されたと連絡が入り、その時の検査で肺が真っ白になっていると聞かされ、みんなびっくりしました。酸素吸入をすると嘘のように元気になり、コロナ禍の事もあり、病室に入る人数も制限され、最後は家でという父の気持ちも判り自宅に戻りましたが、3度目の緊急搬送でお浄土に還りました。
浄土真宗は先に逝かれた人と必ず再開できる世界が約束されている教えです。
ある日、父は母に「ゆっくりして、おいで」と言い残し、ずーと庭を眺めていたようです。
父 宗雄 享年90歳「お父さんに出遇えてありがとう」   文責ー坊守

浄土真宗と医療

 
「西本願寺医師の会」は浄土真宗の僧侶・寺族・門徒などの医師で構成されている本願寺派の団体です。そのメンバーの中の精神科・心療内科の医師で松向寺先生が、森田正馬先生が1919年に開始された精神療法(森田療法)のベースは禅宗にあり、浄土真宗的に確立され治療にあたっておられます。どちらも”あるがままに受け入れる”がキーワードとなる治療法です。
精神療法は精神科や心療内科とは対になる治療法です。診察の対話の中で、理解や認知を少しずつ変化させ、思考にアクセントを加えることにより、患者さんの生きづらさに影響している思考を変えていくものです。
松向寺先生の信仰である浄土真宗をベースに、特に「歎異抄」を座右の書として患者さんの治療にあたっておられます。患者さんが問題としている「不安」を病理(病気の原因)ではなく自然な感情として、人間というものは”煩悩具足の凡夫”であることを知るだけでも、気持ちが楽になったり、落ち込むことが減るようになるようです。
精神医学において精神療法は病気からのリカバリー(回復)の為に必要であり、私がどう生きていくかの指針になります。まさしく親鸞聖人の自身教人信(自ら信じて人に教え信じさせること)の教えです。宗教と精神医学の垣根を越えて叡智を結合させることは、新型コロナウイルスで疲弊した現代社会にも新たな光明となるでしょう。まさしく、浄土真宗の教えは、今、生きてる私達の為のメッセージなのです。
 
注釈 煩悩具足の凡夫
煩悩とは、私達を悩み煩わせる心の働きです。
たとえば、憧れていた一軒家を買ったとしましょう。人生で最も高い買い物であり、大きな喜びを与えてくれましたが、その喜びも束の間、今度はおしゃれな家具が欲しい、大きなテレビがほしい。次から次へと欲しいものが溢れ出てくるのです。何を手に入れても、満足していられるのは、ほんの少しの間だけです。その欲が妨げられた時や、欲しいものが手に入らないとわかった時に、顔を出す煩悩が怒りであったり愚痴や嫉妬なのです。
親鸞聖人は、煩悩まみれの人間。それこそが真実の自己の姿だといわれております。

日本人の宗教意識

 
日本には、宗教を信じる信者数は一体どのくらいいるのでしょう。
文化庁の調査によると、現在2億1000万人余りの信者が各宗教団体から報告されております。
日本人の人口は約1億2500万人。人口数より多い信者数がいることになります。奇妙な数字ですね。 
宗教の歴史をたどると、縄文時代の自然崇拝から始まり6世紀に仏教が伝来し、19世紀の中ごろまで仏教の影響力は強かった。19世紀後半キリスト教の影響も受けるが神仏習合が長く続く。
その為、明治初期に神仏分離がなされたあとも、神道と仏教の間の区別に曖昧な面が残っているようです。
たとえば、神棚を祀っている家庭には仏壇があることが多い。仏教寺院の檀家であるのに神社の氏子であることが多い。信仰心は低いが、宗教的活動になると、国民のイベントにまでなっている。
キリスト教のクリスマス、お正月は、神社に初詣、仏壇・神棚への礼拝、お盆、お彼岸には墓参り、葬儀は仏式。 
宗教儀礼には参加するが、現代の日本人には無宗教の人が多いのも、マスコミに流れやすい国民性と、周りの人と話す機会も減り、自分の考えを持つ人が減ってきていることが原因と考えられる。
私達宗教者にも反省すべきことがあります。
お寺でも初参式・仏前結婚式しております。仏事事でご相談ある方は、お手次のお寺にご相談してくださいね。                                               では、よいお年をお迎えください。 正光寺

喪中につき...

 
11月に入り、そろそろ年賀状の準備に取り掛かる人も多いのではないでしょうか?
どんな文面にしょうかと悩んでいる人、特に親しい人を亡くして「喪中につき…」というハガキを準備している人に
 
例文)

またひとつ、お浄土に蓮の花が開きました
今年◯月◯日、(祖母)◆◆◆◆◆が◯◯歳で、お浄土に生れさせて頂きました。
悲しみは尽きませんが、(祖母)の命日はお浄土の蓮の花より仏さまと生まれ、私たちを
阿弥陀様のお慈悲に導いてくれます。
(祖母)のお育てのなかで、家族が静かに手を合わせ、お正月を迎えることができました。
皆さまには、これからも変わらぬご厚誼のほど、深くお願い申し上げます。

「浄土真宗あったか年賀状文例集」 引用

 
浄土真宗では、命終えたその時に、阿弥陀様のお浄土に往生し仏とならしていただく、悲しみの中にも命の大切な見つめ方があります。
死をけがれととらえる喪中のハガキを出すことは、意にそぐわないことのように思います。

令和3年 この夏を振り返って

 
毎年夏になるとどこかで川が氾濫し、山が崩れ、家が泥に飲み込まれ、尊い命が奪われています。地球温暖化による異常気象が日常化しています。
そして、オリンピックは、世論の反対がありながらにも開催されましたが、競技が始まるとアスリートの活躍に注目が始まり、テレビに釘付けになりました。
同時に「デルタ株」の拡大によって感染者が急増し、現在の日本は、コロナ・パンデミックが始まって以来、最も深刻な状態になっていることは、ご存じのことと思います。
それに加え、最近アフガニスタンの紛争がニュースに流れてきました。
「異常気象」「感染症」「戦争」…私たちが、戦後、高度成長をめざし、自然破壊を進め物質的な豊かさと便利さを求めてきた結果、自己中心的な人間優位な生き方が、もう通じない。改めなければならない時期に来ております。
仏教では「生きとし生けるものは、みんなつながっていて、つながりの中で、私たちは生かされているのです。」
ともにささえあい、力を合わせ、誰もが安心して生活できる社会を、取り戻していきたいものです。